酸っぱいのは豆のせいとは限らない
自分で淹れたコーヒーが妙に酸っぱい。あるいは、雑味のある苦さばかりが立っている。こうしたとき、多くの人はまず豆を疑って別の銘柄に変えます。
ところが、豆を変えても同じ傾向が残ることは珍しくありません。原因が豆ではなく抽出条件にある場合、何を買っても同じ結果になるからです。
コーヒーの味を決める要素は多いように見えて、抽出の段階に限れば実質的に四つしかありません。この記事では、その四つを一つずつ動かして原因を特定していく手順を説明します。
酸味と苦味は抽出量のサイン
まず知っておきたいのが、コーヒーの成分は一斉に溶け出すのではなく、順番があるということです。
抽出の早い段階で出てくるのは酸味を担う成分で、続いて甘みや香りの成分、最後に苦味や渋味の成分が溶け出します。したがって、豆から取り出した成分の量が少なければ酸味に偏り、多すぎれば苦味と渋味に偏ります。
この観点で言い換えると、次のようになります。
- とがった酸味が強く、味が薄く感じる場合は、成分が十分に出ていない状態です。
- 舌に残る渋みや焦げたような苦さがある場合は、成分を取り出しすぎた状態です。
つまり酸味と苦味は好みの問題である以前に、抽出が足りているかどうかを示す指標として読めます。ここが分かると、次に何を変えればよいかが決まります。
切り分けの前に確認すること
抽出条件を触る前に、前提として二つを確認しておきます。
一つは焙煎度です。浅く焙煎された豆は本来的に酸味が強く出ます。明るい酸を特徴とする豆を使っておきながら酸味が気になるのであれば、抽出の問題ではなく選択の問題です。中煎りから深煎りの豆で試したほうが早く解決します。
もう一つは鮮度です。焙煎から日数が経った豆は香りが抜け、酸化によって好ましくない酸味が出ることがあります。抽出条件をいくら詰めても、これは改善しません。焙煎日が明記された豆を、開封後は数週間以内に使い切る前提で考えます。
この二つが問題ないと確認できてから、抽出条件の検証に入ります。
動かせる四つの条件
1. 湯温
湯の温度が低いと成分が溶け出しにくく、酸味に寄ります。沸騰したての湯をそのまま使うと今度は苦味と渋味が出やすくなるため、少し冷ますのが一般的です。
目安としては 90 度前後を基準に、酸っぱいなら数度上げ、苦いなら数度下げます。温度計がなくても、沸騰後に湯を別の容器へ移す回数で数度単位の調整はできます。移し替えるたびに数度下がると考えれば十分です。
2. 挽き目
粒が粗いと湯に触れる表面積が小さくなり、成分が出にくくなります。細かいと逆に出やすくなります。
酸味が強いなら少し細かく、渋みが出るなら少し粗くするのが基本方針です。ただし細かくしすぎると湯の抜けが悪くなり、抽出時間が伸びて過抽出に転びます。挽き目と抽出時間は連動して動くという点を意識してください。
3. 抽出時間
湯と粉が接触している時間です。長ければ成分は多く出ます。
ドリップでは、注ぎ方によって時間が変わります。細く注げば長くなり、太く注げば短くなります。時間だけを独立に変えるのは難しいので、まずは湯温と挽き目を固定したうえで、注ぎ切るまでの時間を計測して記録することから始めます。
4. 粉と湯の比率
味の濃さを決める条件です。粉 1 に対して湯 15 から 16 程度が一般的な出発点になります。
この比率は濃度に効くもので、酸味と苦味のバランスを決めるものではありません。「薄いのに酸っぱい」という状態は、比率ではなく抽出量の不足を意味します。混同しやすいので、濃さの調整と味のバランスの調整は分けて考えます。
変えるのは一度に一つだけ
切り分けの原則はこれに尽きます。湯温と挽き目を同時に変えると、結果が良くなっても悪くなっても、どちらが効いたのか分かりません。
実際の手順としては、まず現状の条件をすべて書き出します。豆の量、湯量、挽き目の設定値、湯温、注ぎ切るまでの時間。次に、一つだけを明確な幅で動かします。中途半端に変えると差が読み取れないので、挽き目なら一段階、湯温なら 3 度から 5 度といった単位で動かします。
飲んだ結果を、酸味が強い方向へ動いたか苦味の方向へ動いたかという軸で記録します。良い悪いではなく方向で記録するのがコツです。これを数回繰り返せば、自分の器具でどの条件がどの程度効くのかが見えてきます。
「酸っぱいのに苦い」場合
抽出が足りないサインと出しすぎのサインが同時に出ることがあります。これはたいてい、湯が粉の中を均一に通っていないことが原因です。
粉の層に部分的な通り道ができると、そこだけ湯が集中して流れ、周囲の粉には十分に湯が触れません。結果として、流れの多い部分は出しすぎ、少ない部分は出し足りないという状態が同居します。
対策は、粉の層を平らにならすこと、注ぐ位置を中心付近に保って壁面に湯を当てないこと、そして最初に少量の湯で全体を湿らせてから本注ぎに入ることです。粉の表面が湯を吸って落ち着くのを待つ工程には、湯の通り道を均一にする意味があります。
まとめ
コーヒーの酸味は抽出の不足を、渋みを伴う苦味は抽出のしすぎを示すサインです。この読み方さえ身に付けば、次に動かすべき条件は自動的に決まります。
まず焙煎度と鮮度という前提を確認し、そのうえで湯温、挽き目、抽出時間、粉と湯の比率という四つの条件を一度に一つずつ動かしていきます。結果は良し悪しではなく、酸味寄りか苦味寄りかという方向で記録します。
器具や環境によって最適値は変わるため、他人の数値をそのまま使っても再現しません。自分の環境での対応関係を数回の試行で把握してしまうほうが、結局は近道です。
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